JPPA第5回豚熱対策部会 農水省意見交換会における「レンダリング装置に関するQ&A」
豚熱発生時の処理方法として、レンダリング装置活用への関心が高いことから、JPPA第5回豚熱対策部会において実施した農林水産省との意見交換会の内容を基に、レンダリング装置に関する情報をQ&A形式でまとめました。
<使用前の手続きについて>
Q どのようなケースでレンダリング装置の使用が検討されますか
- これまで大阪・神奈川で使用しましたが、埋却地を検討するなか、神奈川の事例では準備していた埋却地に水が出てしまい使えなかったことから移動式レンダリング装置の使用を判断しました。
Q 実際の使用までのフローチャートについて、神奈川の事例をとって説明してください
- 別紙のとおりです。処理された生成物は、最終的に焼却処分されますが、焼却場所については各都道府県での事前の調整が必要です。
<設置について>
Q 設置場所の地面の状態に条件はありますか?
- レンダリング装置自体が重いので、舗装されていない地面への設置は難しいと思われます。アスファルトなどによる舗装や、舗装のされていない場所では鉄板を敷くなど、設置面の対応が必要となります。
Q 使用が決定してから稼働するまでの時間はどれくらいかかりますか
- 神奈川での事例では、発生から移送完了までには12時間程度でしたが、設置場所が決まらず、6日かかりました。現場での準備や地盤の状況によってセッティングの時間は変わってきます。レンダリング装置の使用期間は、4日間でした。
Q 設置には、どれくらいの敷地面積が必要ですか
- レンダリング装置自体の基礎的な設置面積は30メートル×30メートル程度ですが、さらに、神奈川の事例でいえば、資材や4,000頭分の生成物を保管しておく場所が必要となり、30メートル×50メートル程度が必要となりました。これは、生成物の保存にミッペール缶という保存容器を使いましたが、レンダリング処理で加熱されるため温度を下げてからでないと容器を重ねておくことができないということもあります。また、搬出作業の動線や消毒方法なども併せて検討しておく必要があります。
Q 敷地内に設置できる場所がない場合はどうすればよいですか
- 県や自治体に相談し、廃校など敷地が広く地盤のしっかりしたところを紹介してもらうようにしてください。その際には、一般に周辺住民への理解を得ることが必要となります。
Q 農場から離れた場所に設置する際は、処分した豚をどのように移動させるのですか
- 農場から離れた場所に死体を移動するためには、防疫指針に基づき体液等の漏出防止措置や消毒の徹底、消毒ポイントの通過等を徹底した上で、途中でウイルスを拡散しないように細心の注意を払って移動させることとなります。
<稼働について>
Q 稼働に必要な人数について教えてください
- 装置を操作する人員として約10人、そのほか、処分頭数にもよりますが、資材を運ぶ人員などが100~200人程度が必要となります。人数の確保については、事前にどの程度準備しているかにもよりますが、都道府県内の最大規模の農場を想定して、動員計画や配置などを検討してもらっています。
Q 加熱処理は何℃で何分くらいですか
- 少なくとも80℃で5分間は加熱するよう調整しますが、機械自体は110℃くらいまではあがるようです。
Q 周囲への影響はどの程度ありますか
- においはある程度は出るため、神奈川県の事例では消臭剤などを使用して軽減させるなどの措置を取りました。しかし、においの問題は個人差などもあるため、周辺の住民から反対も出る可能性はあります。また、騒音も出ます。一時的な処理であることなどを説明して事前に理解を頂く必要があります。
Q 稼働にあたって、1回当たりの経費はどれくらいかかりますか
- 費用は地域・規模にもよっても異なります。人員がどれほど必要か、地盤の整備が必要かなどによって変わってきます。ここまでの事例をみると、少なくとも埋却の数倍はかかることは間違いありません。費用も含め、県と使用できるかどうかよく検討しておく必要があります。
<生成物について>
Q 処理した生成物の重さは元の豚の何%くらいですか
- かなりゆっくりと加熱をすれば80%程度までに減るという実験結果もありますが、神奈川の事例では容積はほとんど変わりませんでした。密閉容器の分、埋却よりもかさが増すと考えてください。
Q 処理された生成物は、ウイルスが死滅して不活化の状態ですか
- 生成物は 少なくとも80℃で5分間は加熱するため不活化はされていると思われますが、交差汚染の可能性もあるため、汚染物として扱います。万が一残存していても、密閉し焼却するため問題はありません。
<その他>
Q 複数箇所で稼働が必要になった場合、稼働できる人員の確保はできますか?
- これまで述べてきたように、費用や人員、資材の確保、焼却施設との調整、周辺住民等への丁寧な説明・調整等、埋却と比べて大きな負担を要することから、埋却による処理が第一優先になると考えています。そもそも、これまでの実績でも同時に複数都道府県で防疫措置を実施していたのは限られた期間であることから、複数箇所でレンダリング装置を活用することはあまり現実的ではないと考えています。南国興産の技術者にも限りがあることからも複数個所での稼働は難しいと考えています。4台配備しているのは、全国どこで発生しても迅速に設置できるようにしているためであって、同時に稼働することを念頭にしているものではありません。
Q 農水省の考えるレンダリング装置のメリットデメリットを教えてください
- メリットは、埋却ができないときにも処理が可能であることです。デメリットは、①殺処分以外に膨大な人員が必要、②密閉容器、運搬車両等膨大な資機材が必要、③設置場所・生成物置き場・焼却施設等、レンダリングに関係する場所・施設を確保する必要、④コストが膨大です。
このため、ワクチンを使用し拡散のリスクが低い地域における豚熱発生時では条件が整えば使用可能ですが、アフリカ豚熱や口蹄疫など拡散リスクの高く極めて迅速に対応しなければならない疾病では、ウイルス拡散防止の観点から直ちに防衛措置を図る必要があるため現実的な選択肢とは必ずしも言えないと考えています。
Q 4台あるレンダリング装置を今後どのように活用していく考えですか
- 病気の種類や規模によっても状況が異なりますが、あくまで埋却を基本とし、レンダリング装置は埋却ができない場合の補完としてしようするものと考えています。埋却を選択せずレンダリング装置の活用を検討する場合には、迅速に稼働できる体制を都道府県と連携して確実に構築しておく必要があります。