豚熱陽性イノシシ注意報 広島県・山口県で陽性イノシシ発見、九州地区も防疫意識の向上を!
<イノシシ注意報①>
(一社)日本養豚開業獣医師協会の伊藤貢先生より、最新の陽性イノシシ地図をいただきました。
これまで豚熱陽性イノシシの発見地点の本州最西端は兵庫県丹波市でしたが、今回そこから約280km離れた山口県岩国市で豚熱陽性イノシシが発見されました。最も近い距離での豚熱陽性イノシシ発見地点である兵庫県南あわじ市からも、230km離れています。
図1の縁の円はオレンジを基点に、最も拡散が遅かった愛知県の数値である1か月当たり5.6km拡散した場合の1年後の距離を示しています。ピンクの円はオレンジを基点に、拡散の早い茨城県・福島県の数値である1か月当たり15.2km拡散した場合の1年後の距離を示しています。
この図から言えることは、以下の点です。
- 兵庫県は全域が、拡散の遅い5.6km/月の緑の円の圏内に入っている
- 茨城県・福島県並みの速さ(15.2km/月)で拡散するピンクの円では、岡山と広島の県境まで到達している可能性
- 岩国市で見つかった陽性イノシシは、兵庫県の発見地点から200km以上離れており、イノシシ間での感染拡大の範囲を越えている
- 埼玉県・福島県・静岡県での陽性イノシシ初発事例と同様に、人が関与していることが推定される
これらを踏まえて注意すべきは、まずは九州、四国地方の皆さんです。現在は、両地域とも豚熱陽性イノシシは確認されていませんが、今回の岩国市のような「ジャンピング」やイノシシ間の感染拡大の可能性がありますので、決して対岸の火事ではありません。現状の対策のままであれば、イノシシのいる地域には確実に豚熱ウイルスが到達します。ウイルス拡散に備え、防疫の充実を図ってください。
豚熱ワクチンの接種については、3月23日の牛豚等疾病小委員会において陽性イノシシが発見された山口県・広島県と隣接する島根県に決定し、九州地区は、ワクチンプログラムの作成を準備するということになりました。
ワクチン接種は豚熱対策に有効な方法ではありますが、接種地域でも農場での感染例があるように、決して万能薬はありません。アフリカ豚熱やPRRS、PED等などの防疫にも繋がりますので、まずはCSFウイルスが侵入する前に、九州全域でバイオセキュリティの今以上の充実を図って頂きたいと思います。
<イノシシ注意報②>
イノシシが活発になる時期になり、東北地方でもさらにイノシシが北上する可能性が高まっています。
図2は、今後1~3か月程度(4月15日~7月15日)でどの程度イノシシが拡散するかを予測したものです。緑の円は、宮城県の1か月当たりの平均感染速度(感染イノシシが見つかった距離)で、ピンクの円は1か月当たりの最大感染速度となります。つまり、7月15日には平均でも岩手県・秋田県南部、最大で中部くらいまでは感染イノシシが到達する可能性があるということです。
現在、最北端で見つかっているのは宮城県北部の栗原町で、つい先日発見されました。暖かくなれば雪も溶け、移動が活発になります。東北地方はすでにワクチン接種地域となっていますが、ワクチン接種をしているからと油断せず、陽性イノシシすなわちウイルスの感染拡大に備えることが必要です。